よくある質問: 細胞治療と再生医療

再生医療とは何ですか?

再生医療は、人体の損傷または異常な細胞、組織、および臓器を修復、置換、再生、復元するための新しい治療法の総称です。世界中の科学者が、心臓発作後の損傷を受けた心筋の修復、火傷した皮膚の置換、脊髄損傷後の運動機能の回復、糖尿病患者のインスリン産生能力のある膵臓組織の再生に向けた研究活動に従事しています。再生医療は、人体の自然治癒力を下支えして活性化することで健康寿命を延ばし、生活の質を改善することが期待されています。

再生医療は、細胞治療、組織工学、生体工学、成長因子、および移植科学など、さまざまな分野に及びます。


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細胞治療とは何ですか?

FDAでは、細胞治療を「体外で処理または変化させた自己細胞、同種異系細胞、異種細胞を投与することによりヒトの病気またはけがを予防、治療、治癒、緩和すること」と定義しています。1細胞治療の目的は、再生医療の目的とも重なりますが、損傷した組織や臓器を修復、置換、復元することです。

細胞治療は、造血細胞移植などの幹細胞移植という形をとり、白血病、リンパ腫、その他の血液疾患の患者の血液系および免疫系の回復に使用されています。

がんと闘う人体の自己免疫系を活性化することを、「養子免疫療法」といいます。この種の細胞治療はがん治療で最も一般的に採用されています。ある種の養子免疫療法では、患者のTキラー細胞 (白血球の1つ) の数を人工的に増やし、そのT細胞を体外で培養した後、患者に再注入します。その結果、T細胞の数が増し、がんに対する患者の免疫反応が強化されます。

細胞治療の種類に関係なく、治療薬の製造には、細胞を変化させたり処理したりするいくつかの複雑な技術が必要になります。細胞工学技術には次のものがあります。

  • 細胞の増殖
  • 細胞の培養
  • 細胞の選択
  • 細胞の薬物治療
  • 細胞の生物学的特性の変更

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幹細胞とは何ですか? また、なぜ重要なのですか?

幹細胞とは、細胞の分化とその遺伝的状態または未分化状態を保持しながら、さらに分化した娘細胞を生み出す能力を保持することで無限に増殖できる細胞 (成体細胞または胚細胞) のことをいいます。

幹細胞は分化全能性、多分化能性、多能性に分類されますが、これは、特殊化した細胞を生成する幹細胞の能力の幅広さを物語っています。幹細胞は、ES (胚幹細胞) から成体幹細胞までの範囲を表す用語です。基本的に、これらは可塑性 (複数の特殊化した種類の細胞に分化できる能力) によって区別されます。

分化全能性幹細胞は、人体および胎盤を構成する216の特殊化されたタイプの細胞に分化する能力があるため、人体の「万能」細胞として知られています。分化全能性幹細胞の例として、受精卵が挙げられます。

多分化能性幹細胞は非常に汎用性の高い細胞で、胎児に発育するために必要な種類を除き、あらゆる特殊化細胞を生み出すことができます。ES細胞は多分化能性細胞です。

多能性幹細胞は、特定の組織、臓器、発生生理系に限定して複数の特殊化された娘細胞を生み出すことができます。たとえば、造血幹細胞は、循環器系の多くのタイプの血液細胞を作り出すことができますが、脳細胞に分化することはできません。成体幹細胞の例には造血幹細胞が挙げられ、この細胞は多能性細胞です。これまでの証拠に基づくと、臍帯血から採取した幹細胞も多能性幹細胞となります。

分化全能性幹細胞、多分化能性幹細胞、多能性幹細胞がヒトの成長連続体にどのように関与するのかについてご覧ください。

科学者は、幹細胞研究には大きなメリットがあり、医療活動を根本的に変えると予測しています。幹細胞は、健康な組織や臓器を生成し、損傷または病変した体部位の置換が可能になるとさえ言われています。細胞分裂と人間発達を理解するための基本研究によって、出生異常の原因を深く理解できるようになる可能性があります。幹細胞は、従来の薬剤の開発に使用される場合もあります。特殊化された肝細胞に分化するように刺激を与えられた幹細胞は、薬剤候補を評価する際の薬物中毒のスクリーニング検査に使用することができます。細胞を利用した治療の臨床的利点はすでに明らかにされていますが、幹細胞の可能性を最大限に引き出すには、数十年の専門研究が必要となるでしょう。当社は、細胞療法および再生医療の成果を着々と達成しつつあります。


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ES細胞とは何ですか?

ES細胞は、胎芽、特に胚盤胞の内細胞塊から供給されます。胚盤胞とは、受胎からおよそ5日で形成される細胞の中空の球です。ES細胞は最も初期の幹細胞であるため、新たな細胞療法や組織再生について長期的な成果が期待されています。

ES細胞は、人体で必要とされる200種類以上のあらゆる細胞に分化することができる多分化能性細胞です。ES細胞の分化と成長を把握して制御するには、長期間にわたる徹底的な研究が必要です。研究所でES細胞を育てるのは時間と努力を要するプロセスです。科学者はES細胞をしっかりと監視し、継続的な成長を観察して、無制御分化や自然分化を防止しなければなりません。

現在、研究で使用されているほとんどのES細胞は、体外受精で作られて余った胚盤胞から提供されています。ウィスコンシン・マディソン大学の幹細胞研究ウェブサイトには興味深い画像が公開されています。


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成体幹細胞とは何ですか?

成体 (体性) 幹細胞は、人体のさまざまな部位にある未分化細胞で、起源組織にもよりますが、多様な特性を持っています。成体幹細胞には自己再生能力があり、起源部位に見られる細胞を形成するように特殊化する娘細胞を生み出すことが可能です。

成体幹細胞は多能性細胞です。つまり、現時点での証拠に基づいて生成できる細胞の種類に制限があることを意味します。しかし、最近の科学的研究によると、成体幹細胞の可塑性は当初の予測よりも大きくなる可能性が示唆されています。幹細胞の可塑性とは、1つの組織から別の組織の特殊化細胞を生成する幹細胞の能力のことです。たとえば、骨髄間質細胞は、骨髄細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、その他の結合組織 (予想) を作り出すことで知られますが、心筋細胞や当初予想されていなかった骨格筋細胞に分化する可能性も出てきました。

血液系と免疫系を生成する造血幹細胞は、現在、最も認知度の高い成体幹細胞です。骨髄から採取された造血幹細胞は、40年以上にわたって白血病やその他の血液疾患で多くの患者を救ってきた治療法に使用されています。造血幹細胞は主に骨髄で見つかりますが、ごく少数が抹消血で見つかることもあります。他の組織から採取される成体幹細胞に比べ、造血幹細胞は比較的入手しやすい細胞です。

間葉幹細胞も骨髄で見つかっています。間葉幹細胞は、脂肪細胞、骨、軟骨および靭帯、筋肉細胞、皮膚細胞、神経細胞が混在した細胞です。

造血幹細胞と間葉幹細胞の分化の様子:4

新生児の臍帯血は造血幹細胞の豊富な供給源です。研究によると、これらの造血幹細胞は他の成体幹細胞と比べて成熟度が低いことが明らかになりました。これは、培養下でより長期間増殖することができ、さらに多様な組織の再生に貢献できることを意味します。現在、臍帯血幹細胞が多分化能性細胞なのか、または多能性細胞なのかについて、およびその可塑性の範囲を明らかにする研究が行われています。

これまで廃棄されてきた臍帯血は、白血病、リンパ腫、その他の死に至る血液疾患の治療のための造血幹細胞の代替供給源として注目され始めました。また、臍帯血は、小児クラッベ病にかかった子供の治療手段としても利用されており、多くの命を救っています。小児クラッベ病は、幼児期に進行性の神経機能の低下や死に至るリソソーム蓄積症です。

成体幹細胞は、その供給源が骨髄、臍帯血、その他の組織に関係なく、存在する量はごくわずかです。そのため、同定、分離、精製が困難になります。現在、大勢の科学者は、存在する成体幹細胞の数と体内での存在場所の調査に取り掛かっています。


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幹細胞はどこから供給されるのですか?

骨髄からの多能性幹細胞は、Thomas、Storb、その他の研究者によって1950年代と1960年代に実験的に移植に使用され、1970年代には悪性血液疾患の幹細胞移植を主導してきました。この研究から「幹細胞」という言葉が生まれました。最初のヒト多分化能性幹細胞は、1998年にウィスコンシン大学のJames Thompson博士によって分離されました。これらの細胞は、体外受精クリニックから入手した胎芽から分離されました。その後、さまざまな成体組織から幹細胞が分離されましたが、これらは多能性細胞であり、多分化能性細胞ではありません。

成体幹細胞は、骨髄、抹消血、臍帯血で見つかっています。最近では、脂肪、骨格筋、皮膚、血管、網膜、肝臓、膵臓、脳で幹細胞が見つかりました。成体幹細胞は非常にまれであり、同定、分離、精製が困難です。


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現在利用されている細胞治療にはどのようなものがありますか? また、将来どのように利用される可能性がありますか?

この40年間、白血病、リンパ腫、重症な再生不良性貧血、遺伝性代謝性疾患の患者の血液系および免疫系の再生には骨髄移植が利用されてきました。しかし、同種骨髄移植の大きな欠点は適合ドナーの確保です。

臍帯血 (UCB) から採取した幹細胞は、簡単に入手できて使用できる治療の源であるため、骨髄移植に代わるものとして注目され始めました。UCB移植によって、非血縁ドナーから移植を受けた患者によく見られる移植片対宿主病など、移植関連合併症の発生率が低くなる可能性があります。また、UCB移植は、骨髄移植よりもドナー適合要件が厳しくないため、患者に適合するドナーが見つかる確率が高くなります。UCB移植は最近まで、幹細胞数が少ないため小児患者に限定されていました。しかし2004年、2つのUCBユニットの幹細胞を組み合わせることで細胞数が増加し、救命に役立つ造血治療を成人患者に拡大できる可能性があることが研究者たちによって証明されました。

血液系および免疫系の再生に加え、科学者は、幹細胞を使用して損傷または病変した組織および臓器を置換できると予測しています。現在、心臓発作後やうっ血性心不全中に瘢痕化した心筋または瀕死の状態の心筋を修復する臨床試験が行われています。糖尿病に関する研究では、現在、必要なインスリンを分泌する膵島細胞となるように幹細胞を訓練する原理の解明が行われています。消耗性の脊髄損傷の治療も、ニューロン、ミエリン、神経細胞の再生を通じて研究者が目指す目標です。

研究者は、基本的な研究を継続しながら、細胞がどのように複製され、特殊化した娘細胞を生み出すかのかを明らかにしようとしています。その原理が判明すれば、出生異常を引き起こす先天的な細胞異常に対する考察を得ることができます。細胞のシグナル伝達経路を把握することも、損傷した部位を幹細胞がどのように特定して損傷した組織や病変組織の修復を開始するのかについてのヒントを与えてくれます。

研究者のもう1つの目標は、幹細胞を薬物伝達システムとして活用することです。幹細胞は、ターゲットとなるがん細胞に化学療法剤を直に伝達する能力があると考えられています。また、幹細胞を使用すると、医薬品開発における安全性を確保するための新薬候補のスクリーニングに使用できる肝細胞やその他の組織を作成することもできます。ヒトの細胞や組織を使用することで、現在使用されている従来の動物モデルよりも良い毒性試験のモデルが得られます。

養子免疫療法の一種であるがんワクチンは、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がんの臨床試験で利用されています。樹状細胞を患者の腫瘍細胞と組み合わせると、がん細胞を特定して破壊するワクチンの生成につながる可能性があります。そのほかにも、養子免疫療法によって、がん患者のTキラー細胞 (白血球の一種) の数を人為的に増やすことができます。その場合、患者のT細胞を採取して体外で培養し、患者に再注入します。その結果、T細胞の数が増し、がんに対する患者の免疫反応が強化されます。


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これらの利用を実現するために克服しなければならない障害とは何ですか?

細胞療法が基本研究機関を脱してクリニックで幅広く利用されるようになるには、多くの技術的障害を克服する必要があります。科学者は、次のことを可能にしなければなりません。
  • 未分化細胞が特殊化細胞に変化するメカニズムを理解して制御する。これには、細胞の分化を開始して制御する遺伝子のスイッチをオン/オフにするのに必要な複雑な信号を特定する必要があります。
  • さまざまな種類の成体幹細胞を特定、分離、精製する。安全で有効な治療を行うには、精製された幹細胞や増幅された幹細胞が必要になります。
  • 治療を目的として十分な量の適切な幹細胞や分化した細胞を再生できるように、病気の治療に必要な種類の細胞になるよう幹細胞の分化を制御する。
  • 幹細胞移植を患者適合型にして免疫系による拒否反応を回避することを学習する。
  • 幹細胞が患者に移植された後、臨床的な改善と正常細胞の開発および機能を証明する。幹細胞は、患者自身の組織と統合し、患者の体の自然細胞の1つとして機能するように学習させる必要があります。

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参考文献

  1. Application of Current Statutory Authorities to Human Somatic Cell Therapy Products and Gene Therapy Products, Notice, Oct 14, 1993 (Federal Register).(Notice from the Center for Biologics Evaluation and Research, Center for Drug Evaluation and Research, Center for Devices and Radiological Health, U.S. Food and Drug Administration.)
  2. Where are adult stem cells?Research in Focus – Stem Cell Therapy from the Medical Research Council (MRC) funded through the UK Government through the Office of Science and Technology (OST).
  3. Weiss, Rick.The Power To Divide.National Geographic Magazine, July 13, 2005:p13.
  4. Stem Cell Information; The official National Institutes of Health resource for stem cell research:http://stemcells.nih.gov/info/basics/basics4.asp
  5. 国際幹細胞学会: http://www.isscr.org/

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