撹拌セルシステムに取って代わるミニメイトカプセルの使用による生産性の向上

はじめに

限外ろ過で生物学的活動と時間を維持

タンパク質精製技術は、サンプル濃縮のための化学薬品沈殿やバッファー交換のための透析のような多種多様な方法から、限外ろ過メンブレンを利用する圧力駆動の精製クロスフローシステムへと進歩してきました。限外ろ過 (UF) 方法では、サイズに応じて分子を分類するように高度に定義された孔径の高分子メンブレンを使用することに依存しています。簡潔に言えば、UFの手順は、より大きな分子を同時に捕捉しながら、流体の圧力を利用して、UFメンブレンを通過したより小さな分子を移行させられるかどうかにかかっています。

化学薬品の沈殿を利用してタンパク質サンプルを濃縮することができる一方で、限外ろ過での分離は、研究者が変性溶媒や塩を追加せずにサンプルを濃縮できるようにする化学的相互作用ではなく、機械的相互作用に基づいています。透析技術を使用したバッファー交換では大容量のバッファーが使用され、溶液に対して働く力は拡散のみであるため、処理には数日間を要する可能性があります。あらかじめ組み立てられた使いやすい限外ろ過デバイスは、他の多くの技術で必要とされている大規模な対応がなくても、迅速に濃縮やバッファー交換を実行できます。

クロスフローを使用した限外ろ過の最適化

限外ろ過は、ダイレクトフローろ過 (DFF) とタンジェンシャルフロー・フィルトレーション (TFF、図1) の2つの動作モードのうちのいずれかで実行できます。DFFは遠心ろ過デバイスを使用する小容量 (最高30mL) では適切に機能しますが、DFFの技術はメンブレンファウリングの問題に突き当たる可能性があります (1)。ゲル層の形成を抑制するために、浮遊型かくはん子構成 (かくはんセル) を使用したり制御された層流を作成したりすることで、メンブレンのアップストリーム側にクロスフローが精製される可能性があります。かくはんセルの作用によってUFの性能は向上している傾向がある一方で、
 







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撹拌の速度とその後のレベルは、スイープの半径に沿って変化するバーのスイープに依存するため、最適な性能の実現は制限されています。

図 1

DFFとTFFの図形での比較

(A) サンプル液が、供給チャンネルからメンブレンの表面に沿って (接して)、メンブレンからも流れています。クロスフローは、ファウリングの原因となる可能性がある表面で分子が構築されないようにします。
(B) TFFプロセスでは、メンブレン表面の単位面積あたりでの大容量処理を可能にするダイレクトフローろ過で見られる透過流束速度の急激な低下を防止します。


(A) 供給がメンブレンに向かいます。孔よりも大きい分子がメンブレンに蓄積してゲルを形成します。これにより表面を詰まらせて、メンブレンからの液体の流出をブロックします。
(B) ろ過される量が増えるにつれて、ファウリングが増加して透過流束速度が急激に低下します。

ミニメイトカプセルで最適化されたクロスフローの性能

撹拌セル技術と比較すると、TFF処理は再現可能で管理しやすく、モニタリングに適しています (4)。全体として、TFFの作用によってメンブレンのファウリングを効果的に制御するメンブレンの表面全体で、サンプルフローの均一で緩やかな再循環が実現されています。メンブレンの表面全体を使用することで透過流束速度が改善され、処理時間を大幅に削減して生産性を向上させます。ミニメイトカプセルはあらかじめ組み立てられているのですぐに使うことができ、ユーザーの対応を必要とせずに1リットルまでの容量を処理できます。対照的に、大部分の撹拌セルデバイスの処理機能は350mLかそれ以下で、何度も開く必要があるため、完全性の面で障害が生じる危険性があり、技術者の貴重な時間も必要とします。弊社では、単純な濃縮プロトコルの実行時やより複雑な酵素精製処理において、ミニメイトカプセルを撹拌セルデバイスで使用することによる大幅な時間の節約を実証しています。

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材料と方法

ミニメイト TFFカプセル

ミニメイト TFFカプセルには自己格納型デバイスに完全に密閉されたオメガ限外ろ過メンブレン (ポリエーテルスルホン) があり、幅広い分子量カットオフで使用できます。ミニメイトカプセルを使用すると、ユーザーがわずかに操作するだけで最大1リットルのサンプルバッチサイズを5mL程度の少ない容量にまで濃縮できます。再使用可能でディスポーサブルなカプセルでは、閉ループ接続で同一のデバイスを使用して、単一または連続した濃縮/ダイアフィルトレーションの手順を実行できます。さまざまなペリスタティックポンプをTFF処理で使用できます。

ミニメイトカプセルの設定
タンジェンシャルフロー・フィルトレーション (TFF):ミニメイトカプセルの設定

撹拌セルデバイス

標準的な市販の撹拌セルデバイスは、製造業者の指示に従って組み立て、操作、およびクリーニングが行われていました。TFFの操作で最も困難とされていたことの1つは、圧力容器や窒素タンクで目的の圧力を作り出す必要があることでした。さらに、撹拌セルデバイスでは、研究者が自分で装置を組み立て、開き、補充し、ダイアフィルトレーションが必要とされる場合に使用する際には分解も行わなくてはなりませんでした。

技術データ ミニメイト 撹拌セル
有効ろ過面積 50cm2 (0.05ft2) 28.7cm2 (0.03ft2)
推奨接線流量 40~50mL/min 適用されません
操作温度範囲 5~50°C (41~122°F) 5~50°C (41~122°F)
最大使用圧力 4bar (60psi) 400kPa 55psi (N2またはろ過空気)
システム稼働容量 (供給/還流液) 5~10mL 5~10mL

図1

ポンプ付きミニメイト TFFカプセルシステム、圧力ゲージ、還流液ねじクランプ、リザーバー、およびチューブの接続
ポンプ付きミニメイト TFFカプセルシステム、圧力ゲージ、還流液ねじクランプ、リザーバー、およびチューブの接続

ミニメイトカプセルを使用した簡単な始動

使いやすいミニメイトカプセルをペリスタルティックポンプ・システムに接続して、還流液チャンネルにクロスフローを作成することができます。ミニメイトデバイスの操作と微調整のより詳細で完全なプロトコルについては、『Care and Use Guide (取り扱いおよび使用説明書)』およびその他記載された出版物 (2、3、および5) を参照してください。以下に操作の概要を簡単に示します。

設定
  1. 必要なすべてのチューブをカプセルに接続します。この際、システムの作業量を減らすためにチューブの長さはできるだけ短くしておきます。カプセルの供給ポートに圧力ゲージを取り付けます。
  2. 必要な流量を得るためにペリスタルティックポンプを校正します。
  3. 空気が簡単に除去されるように、カプセルの還流液側を若干高くします。
  4. 還流液チューブにねじクランプを緩く取り付けます。

処理
  1. ろ過対象の溶液を供給リザーバーに入れ、還流液とろ液の両方のラインを別の容器へ向けます。カプセルを通して流量40mL/分で溶液をポンピングします。
  2. システムのホールドアップ体積 (10mL) とほぼ同量の液量が還流液およびろ液のラインを通してポンピングされたら、還流液ラインを供給リザーバーに戻し、ろ液ラインを別の容器に配置します。
  3. 希望の濃度に達するまで処理を続けます。500mLの溶液を5倍に濃縮する場合は、共有リザーバーに溶液が100mL残っているときにろ過を停止します。
  4. サンプルリザーバー (2) に新しいバッファーを追加することによってダイアフィルトレーション (オプション) を実行します。
  5. 容量が10mL以下の場合は、15mLのシリンジを使用して還流液を収集し、製品の発泡を防ぐため、最終濃縮のためにポンピングを減速します。

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結果と考察

ミニメイトデバイスの使用による生産性の向上

プロセス時間は、デバイスパフォーマンス全般の成果です。5つのミニメイト 10K オメガカプセルの処理操作は、高流量PESまたは再生セルロースメンブレンを含む、同等な撹拌セルの構成を使用した同様の処理条件と直接比較されました。構成間でのプロセス時間の差を示すために、1リットルの2mg/mL BSAを10倍 (100mL) に濃縮する実験を行いました。これらの操作条件で、ミニメイトカプセルを使用した完全な処理がわずか1時間あまりで完了しました (図2)。対照的に、撹拌セルデバイスのプロセス時間は、メンブレンの構成に関係なくその5倍の時間を要しました。プロセス時間が長いことに加え、撹拌セルデバイスは、繰り返しの充填サイクルという形でユーザーの介入を必要としました。

図2

ミニメイトカプセルの使用によりプロセス時間が大幅に短縮
タンジェンシャルフロー・フィルトレーション (TFF):ミニメイトカプセルの使用によって著しく減少する処理回数 

350mLの撹拌セルデバイスまたはミニメイトカプセルで、2mg/mL BSA溶液を10倍 (1000から100mL) に濃縮しました。ミニメイトには組み立て済みのオメガ 10Kメンブレンが含まれています。クロスフローは、約15mL/minの初期ろ液流量を得るために、還流液ループ逆圧が適用され、50mL/minで設定されています。撹拌セルデバイスでは、ポリエーテルスルホン (PES) または再生セルロース (RC) ディスクを使用し、ろ過した空気によって55psiで加圧され、約6mL/分の初期ろ液流量を得ました。エラーバーは、5つの個別の実行での標準的なエラーを示します。

ろ液と還流液の両方の画分で260nmの吸収率を測定したことで、タンパク質濃縮プロセスの確認が可能になりました。撹拌セルデバイスを使用した際は、処理中に10K PESメンブレンを通したBSAの漏れが認められ、完全性において不合格が示されました。その後、構成間で統計的に有意な比較を行うため、かくはんセルでの処理が合計5回成功するまで、追加の実験が行われました。

取り扱いとデバイスの完全性

処理中に発生する完全性の障害は、時間の損失だけではなく、貴重なサンプルの破壊につながる可能性があります。ミニメイトデバイスは、エンドユーザーによる組み立てを要しない、密閉された自己収納型カプセルとして製造されています。TFFを使用した場合、1リットルのタンパク質サンプルは1つのステップで処理できるので、サンプルが乱されるリスクが低減されます。それとは対照的に、SCデバイスには複雑なアッセンブリーがあり、UFメンブレンディスクがデバイスの足元に配置され、ねじで固定されるため、リークまたはバイパスが起こる可能性があります。ほとんどのリークは異常に高いろ液流量によって簡単に特定できます。しかし、部分的なバイパスが起こっている場合は、正常に処理されているかのように見えます。タンパク質の損失が検出されるのは、大分時間が経った後か、処理が終わってからのこともあります。

タンパク質のバイパスについてろ液をモニタリングすることにより、撹拌セル処理での競合他社のPESメンブレンで完全性の面において大きな障害が発生したことが認められました (図3)。ミニメイト TFFおよび再生セルロース撹拌セルデバイスはすべて完全でしたが、競合他社のPESメンブレンでは10回中5回、それぞれ異なる処理段階で失敗しました。

図3

組み立て済みのミニメイトで完全性の面における障害を排除
不可欠なミニメイト TFFおよび再生セルロースかくはんセルデバイス 

サンプルの濃縮は、図2で示したとおりに実行されました。出発物質、最終還流液、および最終ろ液プールのアリコートでは、280nmでタンパク質濃度が分析されました。平均濃度は、それぞれ (5 - ミニメイト)、(10 - SC PES)、(5 - SC RC) での実行の標準エラーを示すエラーバーで表示されています。グラフ表示では、単純にするために、還流液の値をY2軸に表示して処理中に発生した10倍濃縮に対応しています。

シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) の精製

Cayman Chemical (ミシガン州アンナーバー) は、組織ホモジネートからのヒツジ胎盤COX-2酵素の精製において、撹拌セル構成よりもミニメイトカプセルの使用の方が有効であることを検証するために比較研究を実施しました (表1)。同社は、酵素産生プロセスで撹拌セルデバイスに取って代わる新しいプロトコルを簡単に開発することができました。TFF手順から派生したCOX-2比活性が、これまで使用していたかくはんセルデバイスからのアクティビティと一致したことがわかったのです。しかし最も重要なのは、プロセス時間がTFFの約3分の1にまで短縮され、シフト中に2回目の実行ができるようになったことです。

Cayman COX-2 protocol using both the Pall ウルトラセット™ and ミニメイト devices:
  1. バッファーでのヒツジコチレドンの均等化
  2. 4°Cで20分間10,000 x gでの遠心分離ホモジネート
  3. 4°Cで1時間100,000 x gでの超遠心分離上澄み
  4. ツイーン20を1%添加した可溶化バッファーでミクロソームペレットを再懸濁します。
  5. 4°Cで1時間撹拌することによって可溶化します。
  6. 4°Cで1時間、100,000 x gで超遠心分離します。
  7. Concentrate supernatant at 4 °C using a Pall ウルトラセット with a 30K MWCO membrane.300mLから10mLに濃縮してから、DE-53カラムバッファーで100mLに希釈します。
  8. サンプルをDE-53陰イオン交換カラムに入れ、pHグラジエントで酵素を洗浄および溶離します。
  9. 30K MWCOメンブレンを含むミニメイトカプセルまたは撹拌セルデバイスで溶離液を濃縮します。350mLから6mLに濃縮してから、メンブレンを3mLのバッファーで洗浄します。
  10. 濃縮液をセファデックスG-200サイズカラムに入れ、最終処理に備えます。

表 1

シクロオキシゲナーゼ-2との競争試験

独立精製 撹拌セル1 撹拌セル2 撹拌セル3 ミニメイト1 ミニメイト 2(BB100) ミニメイト 3(BB100)
初期タンパク質濃度 (mg/mL) 15.0 14.5 15.0 13.6 14.1 14.7
初期比活性 (U/mg) 66.7 62.1 70.9 73.5 67.4 74.8
濃縮倍率 50 46 50 40 44 41
最終比活性 220 196 191 200 217 206
最終回収率 (SA/mgの総タンパク質) 0.048 0.045 0.043 0.042 0.044 0.040
プロセス時間 (時間) 8.0 8.0 8.0 2.5 2.5 2.5

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結論

操作が簡単なミニメイト TFFシステムは、バッファー交換、または1リットルまでのサンプルのタンパク質濃縮のために最も迅速で信頼性の高い選択肢です。自己収納型TFFカプセルは、洗浄して再利用できるので、設定と操作の時間が節約されます (5)。対照的に、撹拌セルシステムは組み立てを要し、動作の速度も遅く、より集中的なモニタリングを必要とします。さらに、1リットルまでのサンプル容量を処理するには、複数回充填する必要があります。このペーパーでは、ミニメイトカプセルは、1リットルのタンパク質溶液を、比較対象の撹拌セルシステムの5倍の速さで濃縮することができました。この研究結果は、シクロオキシゲナーゼ-2酵素の精製で独立した研究者によってさらに確認され、タンパク質アクティビティを損なわずにプロセス時間が3倍以上短縮される結果が出ています。

ミニメイト TFFカプセルは、少ない処理容量 (1リットル以下) には貴重なツールですが、大容量の場合は、複数のミニメイト TFFカプセルを並列構成でマルチプレキシングすることによって処理できます。さらに、ミニメイト TFFカプセルは、大型のTFFデバイスと同じ長さの流路で設計されているため、研究所のスケールを超えてパイロットや生産プラントで使用される容量にスケーリングするときに、貴重な最適化時間を節約することができます。

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参考文献

  1. L. Schwartz and K. Seeley, 2002.Introduction to Tangential Flow Filtration for Laboratory and Process Development Applications.Pall Scientific & Technical Report, PN 33213.
  2. L. Schwartz, 2003.Diafiltration:A Fast, Efficient Method for Desalting or Buffer Exchange of Biological Samples.Pall Scientific & Technical Report, PN 33289.
  3. L. Schwartz, 2003.Desalting and Buffer Exchange by Dialysis, Gel Filtration or Diafiltration.Pall Scientific & Technical Report, PN 33290.
  4. J. Jenco, T. Hu, L. Schwartz, and K. Seeley, The partnership of the ミニメイト TFF Capsule with Liquid Chromatography Systems Facilitates Lab-Scale Purifications and Process Development Through In-Line Monitoring Technical Report.
  5. ミニメイト Care and Use Manual (取り扱いおよび使用マニュアル)、電子版のみ。ミニメイトTFF製品パッケージ内のCDに格納。