ろ過の役割を理解することによる食品安全管理の改善

by Kathleen S. Berry*, Pall Corporation
PDF版のダウンロード
HACCP1の原理下で管理されているプロセスにおける食品の安全は、プロセス内の重要管理点の分析、特定、管理、監視、修正、検証、文書化を行うための積極的なプログラムを適用することで達成できます。システム内の重要管理点が要件通りに実行されないと、食品の安全性に影響が及ぶ可能性があります。正式なHACCP手順がない場合でも、安全な食品の製造は、プロセス要件を満たすように注意深く選択され維持管理されている装置が適切に機能することに依存しています。

 

ろ過は、さまざまな製造段階で食品に対する重要な保護を提供するプロセスです。ろ過には、製品の感覚的特性に影響を及ぼす粗粒子や微粒子の除去のみを行うものがある一方で、物理的、化学的、および微生物学的な安全に影響を与えるものもあります。

トップページへ

 












物理的な汚染物質除去

物理的安全性とは、お客様に怪我を負わせるような粒子が存在しないことを表します。例としては、破損した紫外線ランプやガラス包装から出るガラスの破片や、可動部があるポンプや装置から出るプラスチックや金属の破片などが挙げられます。これらの異物が原因で、コストのかかる製品の回収を行う場合もあります。予防措置により、このような異物の発生を特定して制限し、さらに品質保証プログラムの一環で汚染物質の検出装置を導入することもできますが、最後のバリアとして最終ポリッシングろ過工程を設けることでさらなる安全措置を講じることができます。物理的な異物からの保護には、調理での蒸気ろ過もあります。多くの食品プロセスではスチームを直接噴射して、フラッシュ加熱や調理、食品に接触する装置部分の殺菌や滅菌、スチームピーリング、CIPシステム用の温水生成など行っています。スチームを使用することで起こるさびや残屑といった粒子の除去に関する要件には、ろ過で対応することができます2

トップページへ

化学薬品の汚染物質除去

化学的安全性とは、食品に不要な化学薬品などの異物が混入していない状態を表します。これには、誤って食品に混入してしまうような洗浄剤や食品工場で使用するその他の化学薬品などが含まれます。

良質な空気または「粒子を含まない」水を必要とする化学薬品処理装置の故障によって、このような事態が発生する場合、これを防止する上で間接的でありながらも重要な役割を果たすのが適切なユーティリティろ過です。

不要な化学薬品成分から安全性を確保する上で、大変重要かつ関心が高まっている観点に、ろ過装置を含む工場装置の食品関連法規への準拠の検証があります。既存の急速に変化を遂げる世界の規制は、ろ過装置からの不要な溶出物で食品が汚染されたり、消費者の健康に悪影響が出ることが無いよう保証しています。これらの規制に準拠し、継続的に遵守を立証していくことは、ろ過サプライヤーが果たすべき重要な役割です。

トップページへ

微生物学的品質

微生物学的品質は、ろ過によって守ることのできる最も一般的な食品安全面です。的確に選定されたろ過装置を適用することで、バイオバーデンを削減し、製品の無菌性を実現します。例えば、無菌化プロセスでは、その無菌処理や包装のプロセスで無菌状態を維持するため、無菌サージタンクやフィラーの滅菌エアフィルターに依存しています。さらに、食品成分を滅菌環境に無菌で投与する際、加熱により熱に弱い成分が破壊されてしまう場合には、滅菌液体フィルターを選択して微生物を除去します。さまざまなタイプのミネラルウォーター用途では、加熱処理は行わず、うまく制御されたダウンストリーム操作と併せて、ボトリング前ろ過滅菌によりボトル飲料の微生物学的安全性を保証しています。特定の乾燥粉末製品では、製造過程でこれらの粉末に触れる空気を適切にろ過することにより、不要な微生物の低減あるいは除去が可能となりますが、それらの微生物はのちに再構成され生育する可能性もあります。

トップページへ

水質の確保

食品に見られる病原体にとって、水が重要な発生源となることがよくあります。水源がますます不足し、水の再利用とリサイクルの必要性が高まる中で、食品工場では、水源や過去の利用履歴に応じて工場の水質に特別の注意を払わなくてはなりません。

製造工場の水が食品原料に直接触れたり、装置の故障により汚染を引き起こす可能性がある場合は、その水処理に対して細心の注意を払う必要があります。プロセス水はその用途に応じて十分にろ過し、最終製品を汚染する可能性のある微生物や寄生生物を除去しなくてはなりません。安全面で特に課題となる例として、未加工あるいは最低限にしか加工されていない生鮮食品の生産が挙げられます。洗浄や冷却といった収穫後の作業で使用する水に対しては、その水質を注意深くモニターし、交差汚染を防ぐ必要があります。ろ過することで、微生物レベルを管理することができます。

トップページへ

ろ過性能の理解

ろ過分野における除去精度や性能に関する基準が存在しないことで、フィルターの選択が的確に行われない場合が多くあります。フィルターの捕捉率は、「公称」、「絶対」、あるいは微生物 (ウイルスも含む) で表します。公称捕捉率も絶対捕捉率も粒子のみの除去を表すものであるため、微生物除去の要件を述べる際は使用しないでください。フィルター製造業者が記載している粒子除去効率は、標準化された粒子の除去効率を定めた試験に基づいています。標準化粒子には、細かい試験用ダストまたは粗い試験用ダストやラテックスビーズのような微生物の形状とはほぼ関係のない硬質球形粒子などがあります。公称ろ過精度も絶対ろ過精度も、フィルターの粒子除去効率はアップストリームとダウンストリームの間の粒子数をもとに特定の粒子サイズのベータ値で表しています。孔径が格付けされたフィルターの性能を正しく理解する上で、シングルパス試験やマルチパス試験などのデータを取る方法、粒子タイプ、試験流量などについても注意深く考慮する必要があります。

ろ過装置の食品関連法規への準拠公称ろ過精度フィルターは異物を部分的に除去するものであるため、非常に重要な除去要件が存在する場合には使用しないでください。ダウンストリームの最終フィルターの場合は、最適なプレフィルターとしてお使いいただけます。公称ろ過精度フィルターの領域内であっても、除去効率の範囲が99% (ベータ値100) より下がる場合があります。例えば、除去効率の範囲が60%のフィルターでは、特定のミクロンサイズの全粒子のうち、除去できるのは60%だけということになります。また、公称ろ過精度のフィルターでも、繊維や固定されていない孔構造メディアが見られることがあり、このようなフィルターでは、圧力の上昇や変動によって異物が再放出されることがあります。絶対ろ過精度フィルターは、絶対とは言い切れないまでも、通常、99.9%を超える精度で粒子を除去することができると解釈されています。除去効率や特定のベータ値を参照すると、もっと確かです。除去効率99.9%とは、1000個ある粒子のうち1つしかフィルターを通過しないことを表しています (ベータ値1000)。重要な用途に使われる高性能の絶対ろ過精度フィルターでは、特定のミクロンレベルで99.98%の粒子を除去することができます。これは、5000個ある粒子のうち1つしかフィルターを通過しないことを表しています (ベータ値5000)。表1はこの概念を表しています。

表1 - 粒子除去性能

 
ベータ値1 流入液の粒子数 捕捉された粒子 流出液の粒子数 除去効率2
ベータ10 5000 4500 500 90%
ベータ20 5000 4750 250 95%
ベータ100 5000 4950 50 99%
ベータ1000 5000 4995 5 99.9%
ベータ5000 5000 4999 1 99.98%
 

 

   

 

1ベータ値=流入液の粒子数÷流出液の粒子数
2除去効率= (流入液の粒子数-流出液の粒子数) x100÷流入液の粒子数

一方、微生物学的に検証されたフィルターは、絶対ろ過精度の粒子フィルターと比べてはるかに高い除去精度を示しています。このようなフィルターの除去効率は、フィルターの性能を表すのに適した大きさのモデル微生物の力価低下で表されます。検証済みの微生物フィルターには、試験内容を示す実績データによる裏付けが必要です。フィルターにチャレンジした微生物の数 (チャレンジレベルは実績に影響します!)、滅菌エアフィルターを検証する際の微生物の種類、大きさ、試験環境の湿度や空気流量などです。さらに、特定の微生物の種類や特定の液体の除去性能に関するデータを提供してくれるフィルター製造業者もあります。フィルター本来の性能を見極めるには、実施した試験内容を詳しく分析する必要があります。フィルター製造業者にバリデーションガイドを求めることで、データシートだけでは分からない情報が得られます。

バイオバーデン削減フィルターで微生物レベルを低減することができます。例えば、0.45μmのメンブレンフィルターでセラチア菌 (0.45μmのメンブレンフィルターによく使われるモデル微生物) を使用して試験を行った場合、菌を106も削減することも不可能ではありません。記載されている除去性能、試験でのチャレンジレベル、使用した微生物の種類などを注意深く見ることが重要です。ろ液の品質は、流入する微生物負荷やその用途よって明らかに異なります。

バイオバーデン削減フィルターが食品の安全性に間接的に貢献している例として、その効果的な除去性能により、ダウンストリーム加熱装置で目指していた微生物の殺菌を実現できたことが挙げられます。UHT (超高温熱処理) 牛乳加工でクロスフロー・メンブレンフィルターを使用することで、無菌操作装置のアップストリームでバクテリア胞子を削減できたのです。

UHT装置への微生物負荷を下げることで、加熱による品質の低下を最小限に抑えるだけでなく、目指していた対数除去率を実現することができます。

医薬品を参照し、法的拘束力を持たない推奨事項を提供する一方で、重要な食品産業の用途に2004 FDA Guidance Document for Industry on Sterile Drug Products produced by Aseptic Processing3を適用することができます。この文書では、滅菌圧縮ガスに対する完全性試験が可能な疎水性メンブレンフィルターの使用について説明しています。さらに、ろ過滅菌グレードフィルターについては、一般的に孔径を0.2μm以下にするように述べています。有効ろ過面積あたり107/cm2の濃度の試験菌が含まれる流体でチャレンジするワーストケースの生産環境で滅菌された流出液が得られるよう、プロセス流からの生微生物の除去が再現できることを検証する必要があります。サイズが小さいため、この試験によく使われるモデル微生物Brevundimonas Diminuta ATCC 19146の平均直径は、0.3μmです。フィルターカートリッジの長さが標準的な10インチのろ過面積に基づくと、力価低下が1010を超えるか、対数除去率 (LRV) が10を超えます。保守的なバリデーション方法では、この要件を超える十分な安全性を提供してくれます。

粒子除去と微生物除去性能を比較すると、絶対ろ過精度のベータ5000粒子除去フィルターの除去効率は99.98%であるのに対し、滅菌グレード液体フィルターの微生物除去率は99.99999999%を超える値を示しています! 表2と表3では、フィルターの微生物除去性能とダウンストリーム汚染への関連性を示しています。

表2 - 微生物除去性能

 
力価低下1 (TR) 対数除去率 (LRV) チャレンジレベル2(CFU/cm2) フィルター表面積 (cm2) 流入微生物負荷 (CFU) 流出微生物負荷 (CFU) 除去効率4
106 6 125/cm2 8000 106 1 99.9999%
106 6 1.25 x 105/cm2 8000 109 103 99.9999%
106 6 1.25 x 107/cm2 8000 1011 105 99.9999%
>1011 >11 1.25 x 107/cm2 8000 1011 0 (滅菌)3 >99.999999999%
 
1力価低下=流入微生物負荷÷流出微生物負荷
2コロニー形成単位 (CFU) /cm2
3流出微生物が0の場合 (無菌の流出液)、0では割り算ができないため、ダウンストリーム負荷を1として力価低下を計算し、除去効率を求めます。
4除去効率= (流入微生物負荷-流出微生物負荷) x100÷流入微生物負荷


表3 - LRV性能と汚染率

 
対数除去率 (LRV) 流入微生物負荷
(CFU/L)
流出微生物負荷
(CFU/L)
汚染率
6 100000 0.1 1 CFU/10L
11 100000 0.000001 1 CFU/1000000L
 

2004 FDA Guidance Documentでは、滅菌済み材料を含むタンクや無菌バリアの役割を果たしたり滅菌ガスの供給に使用したりするフィルターなど、重要な装置のエアろ過用のメンブレンフィルターの使用についても述べています。HEPA4フィルターは、おもに無菌操作室のろ過用とされ、直径0.3μmより大きいガス中の粒子を少なくとも99.97%の除去効率で除去します。

PDA Technical Report 40 for Sterilizing Filtration of Gases5では、「プロセス流体が無菌状態の最終製品や関連装置の重要な面に直接触れる」場合など、重要な用途について述べています。

このような重要な用途で使用する滅菌ガスフィルターに対しては、乾燥したガスだけでなく湿気のあるガスで除去性能を示さなくてはなりません。これらのフィルターにとってワーストケースとなる条件は、液体バクテリアチャレンジ試験です。ろ過メカニズムの働きのため、ガス流の気体分子のブラウン運動 (図1) により、気体分子がフィルターメディアに取り込まれた粒子と衝突してその粒子を捕捉します (図2、3)。液体流をフィルターに通す場合よりも簡単な方法です (図4)。これを拡散防止と呼びます。常に、ガスのろ過の方が液体のろ過よりも行いやすいため、同じフィルターであれば気体での特定のろ過の除去精度の方が液体でのろ過の除去精度を上回るわけです。例として、微生物学的に検証済みの0.2μmろ過滅菌グレードフィルターでは、液体であればこれと同じ大きさのバクテリアを除去するところを、気体であれば (ナノメートルの大きさの) ウイルスなどのさらに小さな粒子を除去します。関連した例で、3μm液体フィルターでは、気体が乾燥した状態であれば、粒子サイズが約1/5~1/10の範囲の粒子も除去することができるでしょう。

滅菌エアフィルターが、パイプラインの結露、圧力変動、あるいはアップストリーム空気乾燥装置の故障が原因で湿潤した状態になると、液体での除去精度に戻ってしまいます (図4)。これらのフィルターによって液体のバクテリアを十分に除去できることが検証されない限り、重要な空気用途で十分な保護が提供できるかは疑問です。疎水性フィルターを使用すると、湿潤状態とその結果として発生する気流のつまりを防くことはできますが、フィルターメディアのタイプと処理により疎水性の度合いが異なるため、すべての疎水性フィルターは同じで、複数のストリーミングサイクルでも常に疎水性があると仮定することはできません。

疎水性は、CWST (クリティカル湿潤表面張力) で表され、滴下試験および固体表面での既知表面張力のある液体の接触角度の測定値によって決定されます。CWSTの単位はダイン/cmで、値が低ければ低いほど疎水性が高いことを示します。フィルターメディアのCWSTは、構成部品と材質およびメディアの表面の粗さによって異なります。

トップページへ

 

図1 - 気体分子はランダム運動またはブラウン運動状態です。

図2 - ガス中の微小粒子またはエアロゾルの水滴に運動中の気体分子が衝突し、粒子やエアロゾルの水滴を動かします。

図3 - ブラウン運動のため、拡散を防止することが、乾性ガスでのろ過メカニズムの重要な部分になります。フィルターの孔径より何倍も小さな粒子が遮断されます。

図4 - 拡散防止は湿潤状態では機能しません。

フィルターの完全性モニタリング

フィルターの完全性を適切にモニタリングすることは、フィルターが期待通りに継続して機能するかどうかを確認するために重要です。フィルターの完全性試験デバイスは、フィルターが破損しているかどうかを測定して文書化します。このような完全性試験は、サブミクロンの微生物フィルターで実行されて初めて意味をなします。

粒子のフィルター性能は、差圧デバイスによってモニタリングされます。差圧は、異物が付着した場合、粒子除去フィルター全体で予測通り継続して上昇します。圧力が突然下がる、全く上がらないという場合は、フィルターから異物がとれたか、フィルターが破損しています。

医薬品業界では、微生物フィルターに対して使用前と使用後の完全性をモニタリングします。食品製造工場では、ろ過の前後に定期的に完全性試験を実行するわけではありませんが、実施を考慮するべきです。使用前のモニタリングでは、出荷または取り付け中に生じた破損を文書化します。その場でのモニタリングでは、フィルターをハウジングに取り付ける際に、潜在的なバイパス状況またはシステムもれを文書化します。使用後のモニタリングでは、バッチの完全性を記録します。特別な場合は、フィルターを蒸気洗浄した後の製造前にフィルターの完全性をモニタリングします。蒸気洗浄は、フィルターが受ける最も損傷する可能性が高い状態であるため、蒸気洗浄後に完全性試験を行うことは理にかなっています。

完全性試験デバイス (図5) は、液体またはガスのメンブレンフィルターのいずれかで使用するために設計されています。デプスフィルターで完全性試験を実行することはできません。扱いやすさが求められる液体メンブレンフィルターに使用されるものや、より特殊な手順が必要なガスフィルターに使用されるものなど、さまざまな種類の完全性試験があります。完全性試験の値は、微生物除去性能と結びついています。

トップページへ

結論

要約すると、ろ過は製造プロセスにおいて重要なステップであり、食品の安全性に影響を与えます。ユーザーは、ろ過メカニズムの複雑さやろ過の用語を理解し、使用しているさまざまなろ過製品を厳密に評価し、ろ過製造業者の実績のある専門知識を信頼して、適切な選択をする必要があります。

 

K.S.Berry ポールグローバルマーケティングマネージャー

 

トップページへ

参考文献と脚注

 

1 Hazard Analysis Critical Control Points (危害分析重要管理点)
2 「3-A Accepted Practices for a Method of Producing Culinary Steam (3-A 調理用蒸気の製造方法に関する慣例)」、番号609-03
3業界用ガイダンス: 「Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing—Current Good Manufacturing Practice (無菌操作によって製造された無菌の医薬品製品—現行の適正製造規範)」、9月2004
4高効率微粒子エア
5 PDA技術レポート40 (TR 40)、Sterilizing Filtration of Gases

 

トップページへ